同胞の法律はどこの法律が適用される?

 「相続は被相続人(死亡した人)の本国法に拠る」のが国際私法上の原則です。日本に住んでいるからといって日本の法律が適用されるわけでもなく、また相続人の国籍などは関係ありません。
在日同胞の場合、
①朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の法を本国法とする人
②韓国法を本国法とする人
③「帰化」して日本国籍になった人
 この3通りが考えられます。特別永住者証明書や在留カードに記載されている国籍表示で本国法が決まるわけではありません! では、どのように本国法は決まるのでしょうか?
 それは、被相続人(死亡した人)の帰属意識、所持している旅券、渡航歴、所属する民族団体、親族との繋がり……などを斟酌して総合的に判断され、被相続人ともっとも密接な地域の法が本国法となります。
 その本国法に基づいて、実際に相続で適用される法律は、
①共和国法を本国法とする人の場合は、共和国の対外民事関係法の規定により日本法
②韓国法を本国法とする人の場合は、韓国法
③「帰化」した日本国籍者の場合は、日本法
となります。このように、在日同胞の相続では、日本が適用される人と韓国法が適用される人がいます。

[ワンポイント] 日本法と韓国法の違い

 前ページでは、同胞の相続では、日本法が適用される人と韓国法が適用される人がいると説明しました。
では、韓国法と日本法ではどのような違いがあるのでしょうか?まずは、①相続人の順位と相続人の範囲、②法定相続分に違いがあります。このほか、相続放棄、遺留分や寄与分の請求などにおいて違いがあります。
 相続人の順位・範囲・ 相続分で日本法と韓国法を比較すると……

日本法
配偶者は同順位
①子……………相続分の1/2,配偶者は1/2
②直系尊属……相続分の1/3,配偶者は2/3
③兄弟姉妹……相続分の1/4,配偶者は3/4

韓国法
配偶者は同順位
①子や孫(直系卑属)
②父母や祖父母(直系尊属)
①または②の相続分1に対し、配偶者1.5
③兄弟姉妹        *配偶者がいない場合
④4親等以内の傍系血族  *配偶者がいない場合

 例えば、妻と子が相続人の場合、日本法では妻の相続分は常に2分の1ですが、韓国法では妻は子の相続分の 1.5倍(5割増し)であるため、韓国法では、子の数が多ければ多いほど妻の相続分が少なくなります。
 韓国法では相続人の範囲が広く、代襲相続の場合、子の配偶者(嫁や婿)も相続人になりますし、甥・姪・従兄弟姉妹・叔父叔母も相続人となる場合があります。

 では、法定相続分における違いを具体的にみてみましょう。大きく異なるのは、配偶者の相続分です。

 例えば、亡夫の財産100万円を妻と子が相続する場合でみてみます。

①日本法では、配偶者は2分の1、残りの2分の1を子の人数で均等に分けます。
例1)子が2人の場合、
 妻は2分の1の50万円、子は残りの2分の1を2人で分けるので、子1人は4分の1の25万円ずつとなります。

例2)子が3人の場合
 妻は2分の1の50万円、子は残りの2分の1を3人に分けるので、子1人は6分の1の16万5千円ずつとなります。

②韓国法では、配偶者の相続分は、子1人の相続分の1.5倍(5割増し)となります。
例1)子が2人の場合、
 妻:子:子=1.5:1:1となり、妻は7分の3、子は7分の2ずつとなります。よって、妻は43万円、子は29万円ずつとなります。

例2)子が3人の場合
 妻:子:子:子=1.5:1:1:1となり、妻は9分の3、子は9分の2ずつとなります。よって、妻は33万円、子は22万円ずつとなります。

 韓国法では、配偶者の相続分が常に2分の1保障される日本法とは異なり、子の数が増えるほど妻の相続分が少なくなります。