[*] 介護保険を利用するには…

介護の始まりは突然です。病気、骨折、認知症、原因は様々ですが、初めてのことに戸惑いながらも次々と事務手続きを済ませ、ことを前に進めなければなりません。これらはほとんど平日昼間に時間を取らねばならず、会社や仕事の都合をつけるだけでも一苦労。親と離れて暮らす遠距離介護の場合はさらに大変でしょう。
こうした事態に備えて、介護の始まりに必要な知識を時系列で整理し頭に入れておきましょう。やるべきことの量は変わりませんが、全体像が見えているだけで、混乱やイライラを減らすことができます。

最初の相談は「地域包括支援センター」へ

親に介護が必要だなと感じたら、まずは親の居住地の「地域包括支援センター」に相談しましょう。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門家が配置されているので、介護制度に関する一般的なアドバイスだけでなく、医療・福祉・保険などの制度を網羅した総合的な相談、支援が可能だからです。
老人福祉施設に併設されていることも多いので、土日の相談が可能な場合も多く、相談は無料でできます。役所のホームページや広報などで住所地所轄のセンターを調べることができます。また、お近くの「居宅介護支援事業所」も地域包括支援センター同様に認定申請の手続きや介護相談に対応してくれます。

介護保険の申請と要介護認定

介護保険は、①要介護認定申請②訪問調査(ご自宅又は入院入所施設において)③要介護認定審査、という手順をふむことで利用することができます。訪問調査では、行政から委託された調査員が心身の状態や生活環境をチェックします。できれば普段の様子を把握している家族が立ち合い、本人の現状を正確に伝えましょう。調査の後は、どの程度の介護(支援)が必要かを判定する要介護認定が行われ「要介護度区分」が決定します。ここまでに申請日からおよそ1カ月かかるとされていますが、早急にサービスの利用が必要な場合は、認定前でも暫定的にサービスを利用できる場合もあるのでケアマネジャーに相談してみましょう。

介護保険で利用できるサービス

介護保険で利用できるサービスには、居宅サービス(自宅で生活する方が対象)と施設サービス(入所)、地域密着型サービスなどがあり、要介護(支援)度によって利用できるサービスが異なります。
通常、居宅介護支援事業者(要介護)または地域包括支援センター(要支援)に依頼し、介護サービス計画(ケアプラン)を作成しますが、利用したい施設やサービス、自宅介護での困りごとなどを積極的に相談し、それぞれの家庭にあった介護サービス計画を立てましょう。

同胞のいる介護施設を探す

デイサービスの利用や施設への入所を考える時、普段の食生活や風習、言葉の問題などから、同胞の利用者や職員のいる施設を探すこともあるでしょう。地域によっては同胞が経営する介護施設や、同胞が多く通うデイサービス、特別養護老人ホームなどがあります。詳細は当センターへお問い合わせください。

無年金者と介護保険

同胞に多い無年金の高齢者で無職の場合、介護保険料の支払いは経済的に大変です。また、年金からの特別徴収が出来ず納付書による支払いとなるため、払い忘れや滞納も生じやすくなります。介護保険料の未納・滞納が続くと、「償還払い」や「保険給付の一時差し止め」、「利用料3割負担」などのペナルティーを受けることになります。こうした事態に陥る前に、一定要件のもと減免を受けられる場合もあるので、早目に市区町村の担当窓口に相談しましょう。

[ワンポイント] 要介護(支援)認定と扶養控除

要介護(支援)認定を受けている場合、身体障害者手帳などを持っていなくても、市区町村役場で「障害者控除対象者認定書」を発行してもらえば、所得税・住民税の障害者控除、または特別障害者控除を受けられます。
居住地の介護保険認定担当窓口に申請し、「認定書」が発行されたら年末調整や確定申告時に添付書類として提出して下さい。場合によっては最高 5年までさかのぼって税金の還付を受けることができる場合があります。ただし、市区町村によって発行条件が異なるので、事前に詳細を確認しましょう。

[ワンポイント] 成年後見制度

認知症などによって判断能力が十分でない人々を法律・生活面で支援する制度です。具体的には、認知症や知的障害、精神障害などにより、日常的に判断能力を欠くため、不動産や預貯金などの財産や日常生活における金銭管理が十分にできない、あるいは病気で入院をする際の諸手続きや、介護が必要になった際の施設への入所手続きなどを適切に行うことができず、不利益を被ることが無いよう、本人の自己決定権を尊重しつつ、その人に代わって権利を擁護しようというものです。
大きくは法定後見人制度と任意後見人制度の 2つがあり、すでに認知症の診断を受けている人の場合は、その判断能力の程度に応じて、補助人、補佐人、成年後見人のいずれかを家庭裁判所で選任してもらいます(医師による所定の診断書が必要です)。
後見人の選任を申し立てることができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長他などです。身寄りや親族がいない場合は、担当のケアマネジャーや市区町村役場の高齢者福祉課の担当者と相談するのがよいでしょう。
後見人には、子などをはじめ親族や、親族以外では弁護士や司法書士、社会福祉士などの法律や福祉の専門家その他の第3者や福祉関係の法人などが選任されることがあります。